第4回生体恒常性とストレスセミナーを開催しました

  第4回生体恒常性とストレス応答セミナーが、2010年5月13日(木)に霜仁会館3階において開催されました。今回は、岡野栄之先生(慶應義塾大学医学部生理学教室 教授)をお招きし、「iPS細胞を用いた再生・創薬研究」というテーマでご講演いただきました。外傷などのストレスにより失われた生体機能を補填し生体恒常性を再獲得させる新たな医療として、再生医療の確立が期待されています。本講演では、再生医療研究の世界的第一人者である岡野先生に、iPS細胞を用いた再生医療の実現化に向け進められているご自身の研究成果を、神経組織再生戦略を中心にお話しいただきました。安全性や生殖細胞系列への移行に優れた質の良いiPS細胞の樹立方法、それらのiPS細胞の有用性について脊髄損傷モデル動物を用い解析した結果を提示いただきました。また、マウス細胞のiPS細胞化と霊長類細胞のiPS細胞化には差があり、ヒト疾患への応用に先立ち、霊長類モデル動物を用いた研究が重要であることを強調され、最近ご自身が確立に成功した霊長類モデル実験系についてもご紹介いただきました。さらに、患者さんの細胞をiPS細胞化することにより、ヒト疾患の病態進行過程をin vitro で再現することが可能となり、難治とされている疾患の病態解析と治療法確立へ向けた有用な研究ツールとなることを、ご自身の最新の研究成果を含め解説いただきました。ご講演後、神経組織欠損部へのiPS細胞投与による神経細胞ネットワーク復元、細胞老化とiPS化効率の関係などについて、活発な討論がなされました。

(主催者)

「宇部日報 平成22年5月15日記事」